強化エンジンマウント&ミッションマウント
ーその功罪ー

2001.10.23
 エンジンを始動した後、ボンネットを開けてエンジンを観察してみると分かりますが、回転数の増減に応じてエンジンがぐらぐら揺れていると思います。たかだか100rpm前後の回転数の変化でさえぐらつくのですから、アクセルのオンオフの度にエンジンがどれくらい揺れているか容易に想像が付くでしょう。

 このようにエンジンが揺れるのは、純正のエンジンマウントが非常に柔らかい材質でできているからです。柔らかいエンジンマウントはエンジンの振動がシャーシに伝達することを抑制し、車内の静粛性を向上させます。しかしエンジンが動揺しやすいということは、アクセルのオンオフの度にエンジンが捻れ、レスポンスが悪化するということも意味します。

 トランスミッションのマウントも同様です。これも純正では材質が非常に柔らかく、エンジンの振動により容易に動揺するため、エンジンの高回転時やコーナリング中にはシフトの入りが悪くなってしまいます。

 この問題を改善するために取られる方法として、エンジンマウント(及びミッションマウント)を強化部品に取り換えたり、エンジントルクダンパーを設置したりします。ここでは、私が実際に取り付けたマウント類のインプレッションを書きます。

 シルビアのエンジンマウントはS13〜S15まで共通であり、S15のNA車ではミッションマウントがS14と共通です。ということで、基本的にS14用を探せば問題ないということになります。

 市販されているマウント類は、およそ下記の通りです。

・のむけんURAS スーパーミッションマウント 9,800-
・のむげんURAS スーパー猿人マウント 19,600-
・NISMO エンジンマウント FR7,000- FL7,000- R5,000- (total 19,000-)(註1)
・GRAND SLAM BM7 ミッションマウントブッシュセット 8,100-

 ですが、一般ユーザで装着率が高いのはNISMOとURASのようです。URASによると「強化エンジンマウントよりさらに強化」とのことなので、どうやらNISMOよりURASの方がより硬い素材でできているようです(未確認)。

 で、アクセルレスポンスの悪さと高回転時のシフトミスにストレスが溜まっていた私は、思わずURASの製品を選択してしまいました。取り付けは日産ディーラーにて。クラッチ交換と同時に行ったので、それなりに安かったかな。

 取り付け当日のことですが、預けていたクルマをディーラーに取りに行ったら、日産の方がやたらと純正のマウントを持って帰るように勧めます。なぜだ?… クルマに乗ってみて、謎はすぐに解けました。

 「こ、これは…!!」

 エンジンをかけた瞬間、ズゴゴゴゴゴゴゴとすさまじい騒音と振動が体を襲いました。後付けのメータは細かに震えて文字が読めず、レーダー探知器は首振り運動を高速で繰り返しており、フットレストからは道路工事のような振動が伝わってきます。ダッシュボードの左右には強い共振がみられ、バックミラーも振動して後が良く見えない…

 「すごすぎる…」

 車を降りてボンネットを開けてみると、なるほどエンジンは見事に静止しています。ほんとに静止。ぴくりとも動かない。その代わりに、エンジンの回転数の変化に合わせて、ボディがかすかに揺れていました (^ ^;

 一瞬、自分のしたことを後悔したりして。まさかここまで激しい振動と騒音が酷いとは想像していなかったからです。言ってみれば安手のトラックに乗っているような気分… 困った。これじゃ、助手席に人は乗せられないかも、と思いきり心配してしまいました。

 しかし、暖気が終わってみると、案外静かになってきました。振動はまだ残りますが、少なくともメーターとバックミラーは使えるようになったので、取りあえず走ってみることに。

 実際に走ってみると、不思議と振動はそれほど気になりませんでした。むしろ高回転時は以前よりずっと静かに感じます。これは純正のエンジンマウントの場合、高回転時にエンジンが動揺し、その振動がボディに伝わってきていたせいだと思います。エンジンは非常に楽に回る印象で、レブリミットぎりぎりまで回転数を上げてもボディに伝わる振動はほんのわずかです。言ってみれば、1,500回転から7,300回転までまったく変わらない振動。あまりにストレスなく回るため、ふと気が付くとレブリミッター付近まで回していることが多くなりました。

 アクセルレスポンスも非常に良く、アクセルを踏んだ瞬間にリアが沈み込みます。また、アクセルオフの際のがくがくした感触もなくなり、アクセルワークがとても素直になりました。高回転時のシフトも楽に入るようになり、当初の目的は完全に果たされました。…停車時の振動を除いて…

 ということで、機能的には極めて満足度の高いチューニングだったのですが、日常の使用については少々問題が生じてしまいました。なんといっても、停車時の振動がかなり酷い。特にフロントのナンバープレートが共振し、非常に大きな音がします。3階の自室まで音が響いてくる程ですからかなりのものです。また、室内の振動も強く、助手席に乗った人は大抵驚きます。(うちの父親は「このクルマ、ディーゼルだったか?」と真顔で訊いてきた…)

 正直、初めの2週間くらいは「やっぱり純正に戻そうか」「いや、やっぱりNISMOに換えようか」などと考えたりもしましたが、そのうちだんだん慣れてしまって (^ ^; むしろエンジン音の変化が良く分かるため、暖気の終了やエンジンオイルの善し悪しが良く分かっていいかな、などと思えるようになりました。最近では低粘度のオイル(註2)を使用するようになったのですが、これによってエンジンの振動はかなり抑制されました。しかもエンジンの吹けも非常に良くなり、やっぱりエンジンマウントを換えてよかった、と心から思えるようになりました。

 今は、2,000回転と3,000回転で生じる共振が鬱陶しいくらいで、非常に快適なドライブが実現されています。

 もしアクセルレスポンスが鈍く、ミッションの入りが悪いと感じている方は、

  1. 家族や彼女(彼氏)に理解があり、性能重視であまり後悔しない人はURAS
  2. できるだけはた迷惑になりたくないが、しかし性能も捨てられない人はNISMO

を、それぞれお奨めします。NISMOについては試していませんが、「後悔した」という人はあまり見当たらないので、恐らくURASよりはマイルドだと思います。尚、NISMOのエンジンマウントは、エンジン搭載位置が3cmほど上ってしまい、場合によってはタワーバーとエンジンが干渉してしまうという報告もあります。エンジンとタワーバーのクリアランスが少ない場合、注意したほうがいいかも知れません。

 そうそう、エンジントルクダンパーですが、少なくともURASのマウントを使用している場合は必要ないと思います。だって、エンジンはもはや全く揺れないんですから。ほんとに感動的に静止します。感動的にうるさくなりますが (^ ^;

 ということで、とりあえずお奨めの逸品でした。


註1)NISMOのミッションマウントは、「リアエンジンマウント」と呼ばれます。

註2)エンジンマウントを交換したときは、Attack RacingのAZX極を使用していたのですが、これは比較的粘度が高くNAには不向きでした。これをCastrolのRS Zero(0W-40)に変更したところ、エンジン音は非常に静かになり、エンジンの回転も非常に軽くなりました。やはりNAには低粘度のオイルが一番だと、この件で痛感しました。

追記 : (2001.10.30)
その後、ナンバープレートの裏面に厚手の両面テープを貼り付けて、ナンバー枠とナンバープレートを密着させてみました。結果、まだびびり音は残るものの、かなり静かになってくれました。
無償で作業をしてくれた日産ディーラーの方に感謝です。

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