ファイナルギアに関する考察

2001.10.22
 ここでは、ファイナルギアとファイナルギアの変更について考察します。

 一般に、エンジンは燃料の燃焼エネルギーをクランクの回転に変換し、その回転はクランクからクラッチを挟んでトランスミッションに伝達され、さらにプロペラシャフト、ディファレンシャル(デフ)、ドライブシャフトを経由してホイール&タイヤに伝えられます。

 エンジンの回転を必要な回転数に変換するため、エンジンの回転はトランスミッションで変速され、更にデフに入力される際に減速されます。このデフに伝達される際の減速比を最終減速比(註1)といい、ファイナルギアとはこの部分を司るピニオンギアとリングギアのセットを指します。これらはデフキャリア(デフケース)内部にあり、普段目に触れることはありません。

 トランスミッションは、運転者の意志でエンジン回転を任意に変換するための機構です。一方、ファイナルギアは固定であり、常に回転の伝達に影響します。減速比が大きければ、エンジンの回転はより低い回転数に変換され、全体にトルクフルだが高速の伸びない特性となります。これをローギアードと呼びます。逆に減速比が小さくなれば、全体にトルクが弱く、その分高速回転を望める特性となります。これをハイギアードと呼びます。一般に、車重に対してエンジン出力の小さいクルマやオフロード車などは、ローギア化される傾向にあります。

 シルビアに関して言えば、NA車はターボ車に比べてよりローギアードです。これは、NA車の方がパワーやトルクの面で不利であり、それを補うためのトルクアップ策だと考えられます。
車種最終減速比
ターボ車3.692
NA車4.083
 普通、NAのパワーアップというと、吸排気系・点火系・CPUの整備が終わった段階でエンジン本体に手を入れることになります。しかしトルクアップだけに限定するなら、その前に最終減速比の変更も考えたいところです。

 最終減速比の変更には、ファイナルギアの交換が必要です。ファイナルギアは各社から発売されていますが、残念ながらS15用に設定されたものは今のところ存在していません。またS14までなら純正流用も一般的ですが、S15はまだ情報が少なく、なかなか適当な組み合わせが見つからない状態です。

 私の場合、NISMOと亀有エンジンワークスに相談して、S14用のファイナルギアを強引にS15用のLSDに組み合わせてみました。

 必要になったパーツと費用は、下記の通りです。

・亀有エンジンワークス ファイナルギアR200 4.625 30,000-
・ATS 12φ->13φ変換ボルト 5,000-
・工賃 (LSDと同時に交換したため詳細不明)

 S14とS15でリングギアの固定用ボルトの径が異なるため、変換ボルトが必要です。しかしそれ以外はなんの問題もなく装着できました。

 使用感ですが、やはりどの回転数、どの変速段においてもトルクアップが体感できます。1速など一瞬でレブリミットまで回ってしまうようになり、5速1,200回転でも加速できるようになりました。これは非常に有効な改良だと思います。減速比は他に4.875、5.143(註2)がありますが、街乗りを考えても4.875程度までは問題ないように思います。峠では今まで鈍重だった2速が軽く吹け上るようになったため、非常に快適に走れるようになりました。

 欠点としては、ミッションそのもののクロス化が行われていないため、ギアの繋がりがより悪く感じるようになること。これはクロスミッションを組めばかなり改善されるものと思われます。また、車速信号に誤差が出るため、速度計や距離計が不正確になります。これは車速パルスを補正するパーツ(註3)が発売されているため、それを利用するという方法もあります。後、全体にローギアードとなったため、高速道路での高速走行はちょっと辛くなりました。同じ速度で走る場合、エンジン回転数がより高くなり、燃費も悪化します。これは6速ミッションに換装すればある程度改善できますが、そのためだけにミッション乗せ換えはちょっと高く付きますね。

 しかし実際に使ってみれば、欠点を補って余りある爽快な加速感に驚きました。ファイナル変更は多少の不具合さえ問題にしなければ、非常に安価で効果の高いチューニングだと思います。



註1)最終減速比について
最終減速比は、ファイナルギアのリングギア(デフ)を1回転させるのに、ピニオンギア(プロペラシャフト)を何回転させる必要があるかを表す数値です。最終減速比が4であれば、ピニオンギアが4回転することでリングギアが1回転する、ということを示します。

註2)亀有エンジンワークス(0489-98-2323)
S14用ファイナルギアは、4.625, 4.875, 5.143の3種類が発売されています。
N2レース用は、二重コーティング(パルフォス+二硫化モリブデン)で50,000円。通常コーティング品で30,000-と非常に割安。ちなみに、NISMOのGTR(BNR32/BCNR33)用のファイナルギアは定価150,000-。高いですね。シルビア用のファイナルギアを製造しているメーカーには、他にE-SRなどがあります。

註3)ナイトスポーツ(03-3773-0077)
・SAD(speed adjustable device) 24,000-
 車速パルスを補正する装置。メーカーに問い合わせたところ、S15にも対応しているとのこと。

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