ブレーキについて
2001.12.12
S15のNA車とターボ車の大きな違いのひとつに、ブレーキ機構があります。主な差異は下記の通りです。
相違点 | NA | TURBO |
1. キャリパー形式 | 1POT片押し | 4POT対向 |
2. ローターの厚み | 22mm | 30mm |
3. ブレーキマスターシリンダー内径 | 15/16インチ | 1インチ |
4. ブレーキブースター容量 | 7+9 | 8+9 |
これらの相違により、ターボ車に比べNA車のブレーキ性能はかなり劣ります。車重が同じで最高速度もほとんど変わらないクルマなのに、ブレーキの差が大きいのはおかしいですね。
さて、NA車のブレーキ性能を向上させようと考えた場合、取るべき方法はいくつかあります。ここでは、ブレーキ機構に関わるパーツのインプレッション等を書きます。
- ブレーキパッド
- ブレーキホース
- ブレーキフルード
- ブレーキマスターシリンダーストッパー
- ブレーキキャリパー&ローター
- ブレーキマスターシリンダー&ブレーキブースター(マスターバック)
- ABSシステム
ブレーキパッド
ブレーキパッドは様々なメーカーから発売されていますが、一般的なブランドとしてはEndless、Projectμが良く知られています。選択の幅は非常に広く、少し効きの良いノーマルパッド的なものからサーキット専用のものまで色々ありますね。どのようなパッドを選択するかは用途とドライバーの好みによります。街乗りが主ならノンアスベスト系のパッドがよく選択されますし、サーキットユースならメタル系でしょうか。メタル系パッドには使用温度域の高いものが多く、場合によっては街乗りに使いにくい場合もあります。
選択の基準としては、
- ローター適正温度はどの程度か
- 初期制動重視か、コントロール性重視か
- ひたすら安いものを求めるか、性能を求めるか
- どの程度の長く使えるか
- ブレーキ鳴きはあるか
- ブレーキダストはどの程度か
といったところでしょうか。
サーキット専用でローター適正温度の下限が高いパッドを街乗りで使おうとすると、朝一番のブレーキや雨の日の高速道路で、ブレーキが全く効かず非常に恐ろしい目に会うかも知れません。街乗りメインだからと安いものを選択したら、ひどいブレーキダストのせいで白いはずのホイールが真っ黒になってしまうこともあります。それなりにスポーティーなパッドを付けたのに、峠を一周攻めただけでフェードしてしまうことも…
私自身は現在GLADのtype CZ(100~850℃)というカーボンメタル系パッドを使用しています。非常に強い制動力と耐フェード性が魅力で、パッドの寿命が比較的長い(サーキット走行後も思ったほど減らない)ことが利点です。欠点は、若干コントロール性が低く限界域のコントロールがしにくいこと、ブレーキ鳴きがあること、ブレーキダストが多いことくらいかな。ダストは水洗いで簡単に落ちるから、あまり問題にはなりませんけど。このパッドは結構気に入ってます。
あ、ちなみにこのパッド、本来はGTRなどの重量級スポーツ用で、シルビアなど中量級にはtype CR(0~750℃)の方が合うはずなのですが、ショップ経由でGLADに問い合わせたところ「サーキットを走るならシルビアでもCZにしてくれ」との返答でした。耐摩耗性と耐フェード性の問題らしいのですが… それなら制動力を抑えてコントロール性を上げたシルビア用のパッドを作ってほしいな、なんて思ったりして。
ところで、S15はNA車もターボ車も「ブレーキアシスト機構」(註1)が標準装備されています。このため、S15はそれ以前のシルビアに比べブレーキのコントロール幅が狭くなっており、パッドはよりコントロール性のよいものを選択する必要があります。
以下に、しばしば使用されているスポーツ走行用のパッドを列挙しておきます。リスト中の温度範囲はローター適正温度を示します。
- Projectμ Type HC : F 23,000-, R 21,000-
ノンアス・カーボンメタル, 0~700℃
- GLAD type ZR-1
セミメタルカーボン, 300~850℃
- Winmax quest CORE-L : F 20,000-, R 20,000-
ノンアス, 常温~600℃
- RAM's GP4-8改 : F 28,000~32,000-, R 28,000~30,000-
カーボンメタル, 0~850℃
- PFC Carbon Metallic Circuit youth : F 30,000-, R 26,000-
カーボンメタル, 100~1,000℃
- SEI Type CS(circuit spec) : F 25,000-, R 23,000-
ノンアスベストロースチール, 30~800℃
- Endless type CC-R : F 28,000-, R 27,000-
セラミックカーボンメタル, 0~800℃
御注意 : 上記リストには、S15NAの設定がないものもあります。
註1) ブレーキアシスト機構
急ブレーキ時にドライバーのブレーキペダル踏力が足りない場合、それを補助してより強い制動力を発揮するための機構。フルブレーキをしたことのない運転初心者にはそれなりに有用な機構だが、ペダル踏力に比例しない制動力が生じることによってブレーキコントロールの幅が狭まるという欠点を持つ。S15、R34等に標準装備されている。
ブレーキフルード
ブレーキラインに満たされているフルードです。DOT規格によりグレード分類され、それぞれのグレードは下記のように設定されています。
JIS | 3種 | 4種 | 5種 |
記号 | BF-3 | BF-4 | BF-5 |
DOT規格 | DOT3 | DOT4 | DOT5 |
ドライ沸点 | 205℃ | 230℃ | 260℃ |
ウェット沸点 | 140℃以上 | 155℃以上 | 180℃以上 |
動粘度 -40℃ | 1500CST以下 | 1800CST以下 | 900CST以下 |
動粘度 50℃ | 4.2CST以上 | 4.2CST以上 | 4.2CST以上 |
動粘度 100℃ | 1.5CST以上 | 1.5CST以上 | 1.5CST以上 |
(ドライ沸点とは0.1%以下、ウェット沸点は3%の水分を含んだ状態でのフルードの沸点)
ブレーキフルードはブレーキペダルの圧をキャリパーに伝達するためのフルードですが、ライン内に気泡が生じると、気泡がクッションになって圧がきちんと伝わらなくなります。ブレーキは非常に高い温度にさらされる部分のため、フルードの沸騰によって気泡が生じると、ブレーキの効きが著しく低下します(ベーパーロック現象)。これを防ぐため、フルードは可能なかぎり沸点の高いものが選択されることになります。ただし、沸点の高いフルードの多くは吸湿しやすく、より劣化しやすいという性質を持つため、用途に合わせた選択が必要になります。
ノーマルでは多くの車種でDOT3のフルードが使用されています。しかしスポーツ走行を行う場合は、少なくともDOT4のフルードを選択したほうがいいでしょう。私自身はSEIKEN及びAPロッキードのDOT4を使用していますが、今まで走行中に問題が生じたことはありません。
尚、最近ではDOT規格にこだわらない高性能フルードなども登場しており、フルードの世界も混沌とした状況になりつつあります。
- BILLION スーパーブレーキフルード 1L 4,500-
ドライ沸点330℃, 1%沸点283℃, 3%沸点180℃
- AP ロッキード ブレーキ&クラッチフルード DOT4 1L 2,000-(市価)
- NISMO GT-Rレーシングブレーキフルード BF-5 1L 5,000-
ブレーキホース
ブレーキホースは、フェンダーに開口するブレーキラインとブレーキキャリパーを連結するための部品です。ブレーキラインはそのほとんどが鋼管で構成されていますが、この部分だけは柔軟性が必要になるため純正ではゴムホースが使われています。ゴム製のホースは圧によって伸縮しやすいため、この部分がブレーキのフィールを悪化させる原因となっています。
後付けの部品としては、圧による拡張の少ないテフロンホースをステンメッシュの被膜で包んだものが一般的です。このパーツを取り付けることにより、ブレーキの剛性感を強めることができます。設置によるデメリットは、ステンメッシュ部分の耐摩耗性が若干低く、メンテナンスに気を使うことくらいでしょうか。他に欠点らしい欠点はほとんどありません。
ステンメッシュホースは、実売20,000円程度です。Goodridge製なら10,000円程度からありますし、性能にもそれほどの差はないので私は安いものを装着しています。取り付け後はブレーキタッチがかなり硬くしっかりとした感じになり、ブレーキのコントロールが容易になりました。
参考までに、いくつか商品の例を挙げておきます。尚、S15NA用のブレーキホースは今のところ販売されておらず、これらは全てターボ用になります。NAへの流用は多分できません。う〜む (^ ^; ブレーキ形式が同じなので、S14NA用のブレーキホースをS15NAに流用することはできそうですが。
- Goodridge ステンメッシュブレーキホース(S15ターボ車用) 10,800-
- NISMO ブレーキホースセット(S15ターボ車用) 19,800-
- Project μ ブレーキホース(S15ターボ車用) 23,000-
ブレーキキャリパー&ローター
ブレーキの強化法としてブレーキパッドの次に取り沙汰されるのが、ブレーキキャリパーとローターの大型化です。特にS15のNA車はフロントブレーキの性能がターボ車に比べて見劣りするため、ここを強化しないとどうにも気分的にすっきりしない部分があるのです。…私だけかも知れませんが。
ということで、キャリパーを強化する方法を色々考えました。方法としては、ターボ用キャリパー流用、他車種からの流用、社外品の使用などがありますね。で、散々検討した結果、私にとってはS15ターボ車のブレーキシステムを流用するのが一番と考えました。
S15の純正キャリパーは新品左右で94,000円とかなり高価ですが、最近ではキャリパーとローターのセットでも4~50,000円程度で状態の良い中古品が手に入ります。純正ですからほぼ無加工で取り付け可能ですし、オーバーホールは純正部品で可能。もちろんディーラーで点検を受けることもできます。S15ターボはそれなりに人気車種なので、対応するブレーキパッドやローター、ブレーキホースなど、社外パーツも豊富にありますし、長期に渡ってそれらの在庫が約束されます。やはり、取り付け後のランニングコストが低いというのは魅力ですね。
もちろん、欠点もあります。ひとつは、ターボ車用キャリパーが鉄製であること。強度はあるのですが、アルミ製の他車種キャリパーや社外品に比べてバネ下重量が大きくなることは避けられません。また、見栄え?も、社外の派手なパーツに比べれば見劣りします。そして当然、より容量の大きな社外品に比べれば、制動力や耐フェード性の点で劣ります。
しかし、工賃含めて10万円以下でキャリパーとローターを同時に強化できるのは、やっぱり魅力的です。一般的な社外キャリパーは本体だけでも20~30万円程度はかかりますし、ローターや車種別の取り付けキットなどを含めると40万円程度の出費は覚悟しなければなりません。また、パッドは専用品を使わなければならず、維持にもそれなりに費用がかかります。
もし状態のいいER34などのアルミキャリパーが手に入れば、本当はそれを使用するのが理想的かも知れません。私はアルミの新品あるいは新品同様のパーツを見つけることができず、結局諦めましたけど。純正流用としては、ER32〜34、BNR32などのキャリパーが使えるようです。ただし、ER34は取り付けボルトがS15と異なるため、取り付けには加工が必要になるそうです。これらも、S15ターボ車からの流用と同じく、非常にコストパフォーマンスの高い方法だと思います。というか、新品を買うなら、S15よりER34ですね。性能と値段を考えると。
参考までに、純正キャリパー及び社外キャリパーキットの価格を列挙しておきます。
- NISSAN S15ターボ車用純正4POTキャリパー 94,000-
- NISSAN ER34純正4POTキャリパー 72,800-
- brembo P28/44 106,000-(片側)
4POT, ピストンφ38mm+φ44mm
- ENDLESS 6POT&4POTキャリパー
4POT 268,000~, 6POT 368,000~, 異径ピストン
- projectμ 6POTハイパーブレーキキャリパー 345,000~
- Outlow ビッグキャリパー 4000/2000 4000 : 159,000~, 2000 : 135,000~
- POWER パワーアルコンキャリパー 490,000-
異径4POT(φ41.3+φ38.1)
- Wilwood ビレットキャリパー
スーパーライト6 268,000-, 異径6POT
スーパーライト 218,000-, 異径4POT
ダイナライト 158,000-, 異径4POT
ちなみに、軽量かつ安価な強化キャリパーとしては、Wilwoodの評判が良いようです。私自身もWilwood製品の購入を検討していたのですが、やっぱり純正の安さに勝てませんでした…
さて、S15ターボ車用の4POT対向キャリパーの取り付けについてですが、実際の取り付けには下記のパーツが別途必要になります。
- 080442352A ボルト, ヘクサゴン 4個, 680-
- 089152421A ワッシャー, スプリング 4個, 240-
- 462062J000 スプリング, ロック 2個, 100-
- 4624591F00 ブレーキチューブ, 1個, 450-
- 4624691F00 ブレーキパイプ, 1個, 450-
この他、ブレーキフルードとターボ車用のブレーキパッドが別途必要になります。また、私はバックプレートを外してしまいましたが、純正部品の取り付けが必要なら左右のバックプレートも購入する必要があります。まあ、大抵の人は純正バックプレートを加工して使用しているようですが。作業はそれほど難しくないようで、ショップに任せたら1時間もかかりませんでした。
取り付け後のブレーキ性能ですが、以前に比べれば圧倒的に制動力が強くなり、熱の入ったSタイヤが簡単にロックしてしまう程になりました。ただ、ペダルのストロークは若干長めになり、タッチはかなりフカフカしたものになってコントロール性が落ちてしまいました。これは比較的大容量のキャリパーに対してNA用マスターシリンダーの容量が足りなくなったためと考えられます。この問題は、その後マスターシリンダーの交換によって解決しました。
ところで、S15ターボ用のキャリパーを装着すると、S15NA純正の15インチホイールは履けなくなります。スペーサーでオフセットすれば無理やり履けないこともありませんが… 15インチをスタッドレス用や緊急用に置いてある方は注意が必要です。日産純正のシルビア用16インチホイールが中古で安く(タイヤ付き4本で10,000円前後)手に入りますので、私はS14K's用の16インチを購入しました。
今回は、ブレーキローターもターボ用に変更しました。NA用のローターも使えることは使えると思いますが、ローターの厚みがかなり違うため、キャリパーのオフセットを変更したり、パッドを上げ底にしたりする必要がありそうです。できれば両方とも同時に換えておく方がいいでしょう。
ローターの強化としては、径を大きくしたり厚みを増やすといった方法で制動力と耐フェード性を向上させたり、表面処理やスリット加工などでブレーキのコントロール性を維持するといった方法があります。パーツには、他車種の純正品を流用したり、社外品から目的にかなうものを選択すればいいでしょう。もちろん、他車種用のパーツを流用する場合は、キャリパーの移設などの加工が必要になってきます
ローター本体の加工にも色々あります。
- スリット加工
ローター表面にスリットを入れることでブレーキパッドの表面を常に切削し、また制動時に発生するガスを効率的に排出することで制動力やフィールを一定に保つことができると言われています。工賃は1枚5,000円程度。欠点は、ブレーキパッドの減りが早くなることでしょうか。
- 穴開け加工
ローター面に穴開け加工を行うことで、ローターの冷却性能を向上させます。工賃は不定。欠点として、ローターの耐久性が低下すると言われています。
- ショットピーイング加工
ローター面にショットピーイング加工(小粒状の鉄球を叩き付けて表面高度を増す加工法)を施し、ローターの耐摩耗性と耐クラック性を向上させます。工賃が比較的高い(1枚10,000円程度)のが欠点です。
純正流用できるローターとして有名なのは、ER34用ローター(1枚17,600円)です。これを利用するにはキャリパーの移設が必要になりますが、専用のブラケットが各社から発売されており、ほぼ無加工で取り付けることができます。
- NightPager 310ローターコンバージョンブラケット(ER34) 19,800-
S15ターボ車にER34用のフロントローターを取り付けるためのブラケットキット。
純正16インチホイールを装着することができます。
- Rash Facture 大容量ブレーキキット(ER34) 21,000-
上記と同様のブラケットキットです。
ER34ローターとセットでは42,000円(19,000円追加)とお得になります。
- Global バージョンI(ER34 16インチ用) 32,000-
ブラケットキットとER純正ローターのセットです。
11,000円追加でローターにスリット加工を注文することができます。
- NightPager ER34ブレーキ取り付けキット 7,800-
ER34のブレーキキャリパーとローターを取り付けるためのキットです。
キャリパー及びローターは別途用意する必要があります。
ブレーキマスターシリンダー&ブレーキブースター(マスターバック)
ブレーキマスターシリンダーは、ブレーキペダルの踏力を油圧に変換する部品です。シリンダー内径が大きくなると、同じ制動力を発揮するためにより大きな踏力が必要になります。つまり、ペダルはより重く、ストロークは短くなります。
S15NA車のブレーキマスターシリンダーは、ターボ車に比べてシリンダー内径が小さくなっています。これはNA車の片押し1POTキャリパーにはちょうどいい大きさなのでしょうが、4POT対向キャリパーを装着すると明らかに力不足となってしまいます。車種別のシリンダー内径は、下記の通りです。
車種 | シリンダー内径 |
S14K's | 15/16インチ (23.8mm) |
S15NA | 15/16インチ (23.8mm) |
S15TB | 16/16インチ (25.4mm) |
BNR32 | 16/16インチ (25.4mm) |
BNR33 | 17/16インチ (26.9mm) |
BNR34 | 17/16インチ (26.9mm) |
つまり、NA車はターボ車に比べて、約6%内径が小さいことになります。
NA車にターボ車用のキャリパーを取り付けると、ペダルのタッチが柔らかくなりストロークが増えてしまいますが、これはマスターシリンダーの容量がターボ車に比べて小さいためです。これを改善するには、より容量の大きなマスターシリンダーに交換する必要があります。もちろん、これは社外品のビッグキャリパーを付けた場合にも有効です。
私は、BNR34純正のマスターシリンダーを付けていますが、S15NA用に比べてペダルタッチががっちりと安定し、かなりしっかりした印象です。制動力をペダルのストローク量ではなく踏力の強弱で調節できる様になったため、交換によってブレーキのコントロール性が大幅に向上しました。BNR34用のマスターシリンダーはS15NAに無加工で装着できますし、値段もターボ車用とほぼ同じ(20,300-)なので、お奨めの改良です。
尚、社外品としては、オートセレクトからR32-34用の強化マスターシリンダーが発売されています。これはR34より更に内径が大きく(18/16インチ)、bremboなど社外品のキャリパーを利用するなら必須のパーツだと思います。メーカーに確認は取れていませんが、純正とほぼ同じ形状であることからS15にも流用できそうですね。
- NISSAN マスターシリンダー(S15ターボ車用)1(16/16) 20,000-
- NISSAN マスターシリンダー(BNR34)17/16 20,300-
- AUTOSELECT マスターシリンダー(R32-34)9/8(18/16) 75,200-
ブレーキブースターは、ブレーキペダルの踏力を増幅してマスターシリンダーに渡すための機構です。ディスクブレーキは人間の踏力そのままでは制動力が発揮しにくいため、このような機構が必要になります。ちなみに、ドラムブレーキは少ない圧で大きな制動力を得ることができるのですが、構造が複雑で放熱性に難があるため、ブレーキブースターの高性能化と低価格化におされ、現在ではほとんど使われなくなりました。
さて、このブースターも、NAとターボとでは容量に違いがあります。もちろんターボ車の方がより増力が大きいので、強化しようと思えばターボ車用を流用する、ということになるのですが… 実際のところ、これは必要ないでしょう。日産のブレーキブースターは全体に効きが強く、NA用でも十分に増力されます。BNR34用マスターシリンダーを装着しても、ブースターの容量は全く問題ありませんでした。
むしろ、S15のブレーキブースターに標準装備されているブレーキアシストの方がくせ者かも知れません。ブレーキパッドの章でも説明しましたが、ブレーキアシスト機構のためにS15はブレーキのコントロール幅が狭くなっています。ブレーキブースターユニットは非分解であり、後から機械的にこの機構をキャンセルすることはできません。もしブレーキアシストを無効にしたければ、S14K'sなどのブレーキブースターを移植した方がいいでしょう。私は現在のところS15NA用のまま使用していますが、将来的には程度の良い中古のS14K's用ブースターが見つかった時点で交換しても良いかなと考えています。
ところで、社外品のブレーキブースターは今まで見たことがありません。どこか出してますか?
- NISSAN 47210-91F50 ブレーキブースター(S15ターボ車用) 44,700-
ABS
ABS(アンチブレーキロックシステム)は、制動時にタイヤがロックすると、瞬間的にブレーキを緩めてタイヤのグリップを回復させ、常にある程度の制動力を維持するための機構です。連続的なロックを排除することで、フラットスポットの生成を防いだり、フルブレーキ時の操舵性を確保することもできます。
S15のABSは4輪を同時に制御するタイプのため、全てのタイヤを独立して制御するGTR等のABSより性能の点で劣ります。また、限界域のブレーキングがABSの割り込み制御によって困難になることもあります。そのような理由でABSを忌避するドライバーも多く、サーキット仕様のS15にはABSユニットを排除したものが目立ちます。
ただ、サーキット初心者にとっては案外強い味方にもなったりしますし、私はしばらくABSを残したままで走ろうと考えています。いずれきちんとブレーキングできるようになれば、外して軽量化するかも知れませんが。
尚、一部のショップではABSのチューンや他車種からの移植も試みられているようですが、現在のところ芳しい噂は耳にしていません。
ブレーキマスターシリンダーストッパー
マスターシリンダーストッパーは、マスターシリンダーの動きを制限する装置です。ブレーキペダルを踏み込むと、マスターバックによって増力されたピストンの圧力によってシリンダーは前方に移動します。この動きがブレーキのタッチを悪化させる原因になります。これを制限するための装置がマスターシリンダーストッパーで、一般には右ストラット(右フェンダー)内側のサービスホールを利用して取り付けられます。このパーツによってブレーキのダイレクト感が増し、制動力のコントロール性が良くなります。価格が安く取り付けが容易なことから、パッド交換、ライン交換と共に頻用されるパーツです。
しかしストッパーの装着によってストラット部分に慢性的な外力がかかるため、ボディーの劣化を懸念して装着を見送る人もいるようです。この様な場合、ストラットタワーバーとマスターシリンダーストッパーを一体化した商品を使ったり、バルクヘッドにストッパーのステーを溶接して剛性感を出す、という方法もあります。
マスターシリンダーストッパーは、NISMO、CUSCOなど多数のメーカーから製品が発売されています。ただ、S15用と明記されたものは少ないため、購入の際にはメーカーに問い合わせた方がいいと思います。フェンダーの構造とマスターシリンダーの軸線が同じで、マスターシリンダーの全長もほぼ同じなので、ターボ用でも問題なく付くとは思いますけどね。
このパーツについては、私は現在のところ使用していません。
- NISMO ブレーキマスターシリンダーストッパー(S14用) 12,000-
- CUSCO ブレーキマスターシリンダーストッパー(S13-15用) 6,000-
- RIGID ストラットタワーバー(マスターシリンダーストッパー付き) 17,000~
このページに関するお問い合わせは、karino@drycarbon.comまで。
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