先日ネットワークをさまよっていて、とんでもない掘り出し物のソフトウェアに出会いました。「す」… それがそのソフトウェアの名前です。実はこのソフト、フリーのIMなのです。IMといえば「ことえり」や「ATOK8」が有名ですが、この「す」というIM、そんじょそこらのIMとは違います。
どこが違うのかって?
普通IMというのは「ひらがな」を入力して「漢字」に変換する、「かな漢字変換」方式のIMを指します。しかしもともとIMは2バイト文字を少ないキーで入力するためのソフトウェアですから、かな漢字変換にこだわる必要はないですよね?
なんと、この「す」は、すべての2バイト文字を2回のキー操作で一文字ずつ入力するためのIMなのです。
入力方法は簡単です。キャップスロックがかかった状態で2バイト文字が打てますので、その状態で2回、キーを打ちます。例えば「狩」と入力したければ「"O" 」+「 shift & "H"」とキーを打てばOK。どんな2バイト文字も2回のキー操作で入力できますから、指を動かす回数はかな漢字変換の時と比べて格段に少なくなります。もちろん誤変換もありません。
しかしまあ、ちょっと考えれば分かりますが、この方法には大きな欠点があります。
すべての文字を直接指定しなければならないということは、すべての文字を表すキー操作を覚えなければならないということを表します。もちろん補助的な機能を使って目的の文字を探すことはできますが、探していてはスムーズな入力など望めません。作者自身も完全にこの方式になれるまで何カ月もかかったそうですから、他の人が習得する場合の労力や時間も推して知るべしです。
私自身、今までかな漢字変換に親しんできましたし、すでに必要にして十分な入力速度も得ています。従って、このIMに乗り換える気はありません。現在文字入力が必要な仕事は沢山あるわけですから、他のIMを習得している時間はないのです。
しかしそれでも、私はこの「す」が気になってしかたないのです。使わないと決めたはずなのに「す」をインストールしたままにしてあるのがなによりの証拠。その原因は多分、私が現在のIMに強い不満を持っているからでしょう。
例えば「誤変換」は、かな漢字変換の場合必ず生じてくる問題です。「ことえり」などは論外ですが、「ATOK8」などでもかなり頻繁に訳の分からない変換をしてくれます。いや、訳が分からない場合はまだいい、一番問題になるのは、一目で誤りと分からない誤変換ですね。
また、ちょっとした漢字を入力するのにも、その漢字を持った別の単語を入力して必要のない部分を削除したり、漢字のコード表を表示させて探したりと、かなり大変な目に遭います。特殊記号もそう、色々な文字列に特殊文字を与えてはみても、すべての文字を網羅できるわけではありません。
平仮名しか覚えなくていいとはいえ、かな漢字変換も大きな欠点を持っているわけです。
結局、今のところ満足のいくIMなど望むべくもありません。「す」も「ATOK」も、ヨーロッパ語圏の人がアルファベットを打つ感覚で日本語を入力できるわけではないのです。使い慣れれば「す」がそれに近づくかもしれませんが、習得するための労力がどうしても問題になります。
直接入力でもかな漢字変換でもない入力方式… どんな文字も簡単に入力できる入力方式が、いつの日にか登場することを願います。